映画 52ヘルツのクジラたち 感想 考えさせられる名作だが気になる点もあり

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『52ヘルツのクジラたち』基本的に傑作

冒頭からカメラワークが冴え渡りまくっていて、すぐに「この映画は期待できる」と思いましたがやはり面白かった。

映画『世界の終わりから』は普段生活しているような繁華街をすごく新鮮な描き方をしていましたが、

『52ヘルツのクジラたち』は田舎町の、特に海の描き方がすごく、どこを切り取っても1枚の絵として成立するような名シーンばかり。

田舎の風景だけでなく西野七瀬さんと杉咲花ちゃんの会話シーンなんかもカメラの切り替えで緊迫感を上手に表現していましたし、

遊園地にまつわる一連のシーンあたりもあまりの画作りの上手さに心底感動しました。

もちろん杉咲花ちゃんや志尊淳くん、52・愛(いとし)役の桑名桃李くんの演技も素晴らしいです。

こう言うハイレベルな映画を観ると俄然映画熱が上がる。

そしてその分次に観た映画がイマイチだった時のダメージも大きくなる

志尊淳くん演じるアンさん

予告とかあらすじを一切見ずに鑑賞したので、

志尊淳くんが演じる=本来の性別は男性と言う思い込みがありました。

ヒゲが気になってはいたものの

男性だと思い込んでいたもので劇中でホルモン注射?をしているシーンで「この人は身体が男性で心が女性なんだな」と思ったのですが、その逆で身体が女性の性自認が男性でした。

これはうまい叙述トリックだなと思ったのですが、あらすじとかでは普通に開示されていた情報だった模様。

前情報何もなしに観に行って良かった?

公称する身長が178cmの志尊淳くんが元は女性はちょっとムリがある、とは思ったものの

繊細な演技と卒業アルバムの可愛すぎる志尊淳くんの写真でちゃんと説得力がありました。

本当にセリフなしでもちょっとした表情の変化や間の作り方でアンさんの心情を伝えてくるんですよね。

特段LGBTに関心のない管理人にも色々と考えさせられるものがありました。

男性の描き方に少し疑問

この映画において、悪質な人間は男女両方に配分されています。

善玉女性・元女性は圧倒的な善として描かれていて、善玉な男性もいるにはいるもののあまり目立たない。

『短絡的で暴力的な男性』ばかりが目立つ作りになっていて、杉咲花ちゃん演じる貴瑚もその男性の加害性によって運命を狂わされる。

まぁ男性の短絡さ、暴力性については同性から見ても思うところがなくはないのですが、

それにしても宮沢氷魚さん演じる主税(ちから)は徹頭徹尾あまりに救いようがない。



特定の界隈が好んで使う「有害な男らしさ」「有害な男性性」の体現のようなキャラクター。

トランスジェンダーや女性がこんな役回りだったら燃えそうなものですけど、男性だったらいくら悪し様に描いてもさして問題にはならなそうな世の中の風潮。

作品内での男性の描かれ方そのものよりも、『男性の有害性を描いた』ことを手放しで絶賛する人が多そうなのがちょっとゲンナリします。

特に邦画監督、映画評論家界隈ってこの手の描写が好きな人が多いイメージ。

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