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天気の子
言わずとしれた新海誠監督の最新作です。
新海誠作品は全て鑑賞済みでの感想。
良かったところ
中盤の容赦ない社会/大人からの弾圧
正直言って主人公である帆高達の行動にも問題点が多々あるので、一概に大人=悪と言う描画ではないと思うのですが、それにしても救いのない描写の連続で胃が痛くなりそう。
大人びて頼りがいのあった凪先輩が婦警にたやすく捕まってしまうところは絶望感がありましたね。
特別ゲスト
前作『君の名は。』でもあった新海誠式スターシステムのようなものですが、まあファンサービスは素直に喜んでおきましょう。
やっぱり大人はタバコだろ!
頑ななまでに『大人=タバコ』と言う偏執的かつ前時代的な描写を用いてきた新海誠。
『君の名は。』が売れたことだしそろそろこの描写も卒業かと思ったところ、後半でやはりタバコが出てくるところは監督の「やりたいことをやる」と言う意思表示に思えてよかったですね。
ここから加速度的に厭世観が増していく展開を含め、「君の名は。」が商業的に成功したことで逆に新海誠がやりたいことをやれたのではないでしょうか。
セカイ系ど真ん中のラスト
賛否両論あるのは分かりますが、運命の人に比べれば善悪なんてクソくらえ、と言う非常に新海誠らしい結末と言えるのではないでしょうか。
エモーショナルな映像表現と相まって、序盤の退屈さを吹き飛ばすカタルシスがあったと思います。
若者は責任を感じずにもっと自分の思うままに生きていい、と言う前向きなメッセージも感じ取れますね。
一方で監督自らが「賛否両論あるラストにした」と言ってしまっているのは予防線や逃げに感じられてしまう、と言う人もいるのはまぁ分からなくもない。
ダメなところ
いくらなんでも序盤のテンポが悪すぎる
類型的なハリウッド映画のようにかったるい人物紹介と背景説明に終始する序盤のテンポの悪さはちょっと許容しがたい。
しばらくは登場人物の誰にも感情移入できない展開ですし、正直言ってかなり退屈でした。
寒いギャグ描写
90年代アニメのようなズッコケギャグ描写がちょいちょい挟まってくるのもテンポの悪化に一役買っています。
『君の名は。』のギャグは割と面白かったのにどうしてこうなったのか。
拳銃と発砲
性衝動や決意の大きさを表す比喩だと取れないこともないのですが、さすがに行動がアウトすぎてこれで被害者面されるのはなんか違うなー、と言う感じが拭えないですね。
拳銃自体がマクガフィンと言えばそれまでですが、いまいち世界観とマッチしていないように感じました。
総評
『君の名は。』のように洗練された万人受けする映画では全く無いですし、巫女だ人柱だのの理由付けもガバガバで不満に思う人が多いのも分かります。
『君の名は。』で一つの到達点に達した新海誠がやりたいことを今の技術で作った映画と言うことにどれだけ価値を見出せるかどうか。
個人的には終わりよければ全てよし、的な展開ながら結構なモヤモヤが残る点も含め、尖った佳作と言う評価に落ち着きました。
賛否どちらにせよ、鑑賞後に誰かと意見を交わしたくなる作品であることは間違いないと思います。
代々木会館は取り壊しが決定してしまいましたが、聖地が手頃なところにあるのも魅力ですね。
壊れる前に写真を撮ってきました。