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ちはやふる 結び
もはや実写化と言う枠を超えた大傑作青春スポ根シリーズの完結作。
上の句も下の句も『セリフに頼らないシナリオ運び』『的確なカット割り』『照明使い』『伏線回収』全てが素晴らしい邦画の真髄と言える作品でした。
とは言え3部作全てが傑作なんてことがあるのかちょっと疑問に思いつつも鑑賞して来ました。
良かったところ
太一中心の作劇
どうやら原作とは違う展開のようですが、自らを凡才であると認めている太一をメインにしたのは大正解だと思います。
周防さんと言う師を見出し、葛藤の末にかるた部に復帰、そして新との対決と言う王道展開はやっぱり燃える。
野村周平くんは『帝一の國』のコメディー演技とは180度違う演技の振れ幅を見せてくれます。
かるたシーンの演出の強化
天才・千早の視界に映る映像の可視化は圧巻でした。
スローモーション演出も上の句・下の句以上に効果的に使われ、百人一首のルールが全く分からなくても絵だけで楽しめる仕上がりなのが凄い。
テーマの統一感
周防さんと太一、千早と新入部員、いずれも『継承』がテーマになっています。
多少説明的なセリフもありましたが、ラストに向けて自然に両サイドが調和していく展開は見事。
相変わらず冴え渡る編集の妙
自然な余韻を残すカット割りが上の句から結びに至るまで本当に上手いですね。
役者のセリフの間の取り方やトーンなども相当丁寧な演技指導が入っているのではないでしょうか。
全くダレることなく最後まで観られる仕上がりです。
賀来賢人演じる周防さん
『賀来賢人』でGoogle検索すると伊藤潤二先生のマンガに出てきそうな表情がヒットしますが、劇中では視力にハンデを抱える周防さんの傍若無人ながら繊細な人となりを見事に演じていました。
上の句での國村隼さんに代わり、真島太一の成長を見守る姿はこの作品のテーマを一番体現していたと言えるかと。
最初は取り付く島もなかったのに、練習試合を通して次第に心を通わせていく過程が良かったですね。
適度に挟まれるギャグ
太一の苦悩・新との三角関係など湿っぽい展開も含んでいる作品ですが、清原果耶ちゃん演じる準クイーン我妻伊織のフラれ芸や松岡茉優さん演じるクイーンのオタクっぷりなど、笑えるシーンもちょいちょいありました。
クイーンに関しては今回ほとんどギャグパート担当になっているのでここは賛否が分かれそうですけどね。
広瀬すずちゃん
トップ女優の広瀬すずちゃんが最高のハマり役で最高の演技をしている、これだけでもこの作品と言うかシリーズを観る価値があります。
試合中のスローモーションでも1ミリのスキもなく可愛いのが恐ろしい。
ダメなところ
ニコニコ動画風実況演出
もしこの世界にニコニコ動画があったら「綾瀬千早選手かわえええ」「クイーンは俺の嫁」系のコメントで動画が埋め尽くされるに決まっています。
妙に現実に引き戻される感があったので個人的にはあの演出はナシですね。
アニメ風の演出
ラスト付近で唐突にアニメ風演出が出てきますが、もともと最高峰の美少女とイケメンキャストを揃えているんだからそのままでいのになぁと感じました。
机くんと肉まんくんの影が薄い
机くんの役割は上の句で終わってしまったのか…
蛇足にならない程度にもう少し出番を増やしてほしかった気もしますね。
総評
個人的には大傑作であるちはやふる上の句には及ばなかったと思います。
とは言え十分に見応えのある佳作であり、邦画の良点がたくさん詰まっている作品です。
実写化映画に偏見がある人ほど観てほしい作品ですね。